のび太の最後
ニューヨークのとある67階建てのビルの最上階。葉巻を片手に一人の男が見るからに高級そうなイスに深々と座っていた。彼は幾つもの事業で成功した青年実業家である。当然このビルも彼が所有するものだ。時計の針が午後三時を指そうかという頃、彼は近くに居たブロンドの秘書に昔話をはじめた。「僕はね、昔はいじめられっ子だったんだ。それを見かねてある人が僕をサポートしてくれるネコ型ロボットをくれたんだ…」秘書は普段多くを語らない彼の言葉に耳をかたむけた。それは、まるでおとぎ話のような話で、秘書には全く理解できなかった。一度は高校に入学した彼だが、やはりいじめの対象となってしまい、学校中退を余儀なくされた。しかし「働かざる者食うべからず」という彼の両親の厳しい信念のため彼はすぐに働きに出ることになる。しかし、もともとグータラな彼は、どんな仕事も長続きせず、辞めては次の仕事を探すの繰り返しだった。そんな彼を見かねて、ネコ型ロボットが助け舟をだした。それは、誰でも思いつくような事で、タイムマシーンを使って未来に行き、競馬の結果を見てから馬券を買うというものだった。当然、彼のジュース一本しか買えないような財布はみるみる間に札束で膨れ上がっていき、
ギャンブルを通してできた仲間と銀座で豪遊する日々を送った。しかし、彼の事を嫉んだ仲間が彼を裏切り、彼の好意を『タイムマシーンを使った不正行為』として、ネットで告発したのだ。彼は、ギャンブルのできない環境に陥れられてしまった。それは、本当にあっという間だった。その時彼は、まだ17歳で、当時の日本において、馬券の購入すら違法行為だったからだ。しかし、賭け事の味が忘れられなかった彼は、ノミ屋に手をだした。初めは他人の名前を使い稼ぎまくったが、当然”裏”相手に彼の行為は続かなかった。そして、追い込みをかけられる状態になった彼は、とうとうネコ型ロボットと共に地方の村に身を隠す事になったのだ。「今度はマジメに働こう」最初のうちは彼もそう思ったのだが、もともと付き合いが下手だった彼は、仲間を金で動かす程度の事しかできない人間であり、再び、転職を繰り返す日々を過ごしていた。そして、所詮は狭い村、彼のグータラな噂は村中に広まり、仕事をさせてもらえない状態にまで陥ることになった。そんな彼を見かねて、ネコ型ロボットが次に出した物は「どこでもドア」という道具だった。これを使うことによって彼は、預かった荷物を受け取り指定された所に送り届けるという仕事を始める。そして、この仕事は大当たりし、かつての様に金には不自由しない生活を取り戻す事ができた。それを確認したネコ型ロボットは突然「君ならもう一人でやっていけるね、僕は未来に帰ることにするよ。」と彼に告げる。彼は泣き叫んで引き留めようとしたが、それは聞き入れられなかった。「最後に君が僕を忘れないように道具を一つあげるよ、何がいい?」と聞かれた。いきなりの問いにすぐに答えられるはずはない。混乱している彼の口から出た言葉は「すっスモールライト」。自分が何を言っているのかその時はさっぱりわからなかった。「じゃーここに置いておくよ。」そして次の瞬間、ネコ型ロボットは彼の前から姿を消した。しかし、彼が立ち直るのにそう時間は掛からなかった。次の事業を興さなければ。彼はそう思い次の仕事の準備をはじめた。今度の事業は、産業廃棄物の処理である。集めた廃棄物をスモールライトで小さくして片付けるというものだ。
彼はこの事業で巨万の富を築き上げ、そして更なる会社の発展を目指し、ニューヨークに本社ビルを建てたのだ。ブロンドの秘書に話終わって一息ついた時、ドアをノックする音が社長室に響いた。秘書の答えにドアが開かれ、一人の大柄な男が入ってきた。
「ああ。剛田君、最近体調はどうだね?」入って来た男は剛田といい、彼がまだ子供の頃に近所のガキ大将として皆をまとめていた存在だった。それを評価し事業に役立てようとアメリカに連れてきていたのだが…「それがですね、社長…ドクターの診察によると驚いたことに
私の身体は放射能に汚染されているんだそうです。」彼は、剛田がなぜそんな事を唐突に言うのかわからなかった。「私だけでなく、私の家族もです。…社長が提供してくれた社屋、その地下にはかつて社長が埋めた核物質がそのままになっている。全部調べました。私も信じられないが、放射能は今も出つづけているようです。」「剛田君それは…」「のび太ァ!!!」剛田の大きな声に驚いた秘書が振りいた瞬間、「プシュッ」っと嫌な音がした。剛田の手には握られている拳銃のサイレンサーからは煙がゆらゆら立ち昇っていた。倒れこんだ彼が最後に力を振り絞って言った言葉は
「ドラえもん…」